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イヌ 13歳9ヵ月 オス(未去勢) です。
【 2日前から食欲が無くなり、全く鳴かなくなった。元気が無い。動かない。 】というワンちゃんです。
■ ワンちゃんの身体検査を行っている時に、【 お腹が張っており、波動感がある 】状態で、お腹に水が溜まっているような感覚がありました。 そして、心臓の雑音が重度に聴診できる状況でしたので、血液検査および胸部と腹部のレントゲン検査を行いました。
■ レントゲンの結果、心臓はかなり大きくなっており、お腹の中にはお水が溜まっていました。
■ 腹水が貯留している際に考えられる原因として、
① 血液中のタンパク質の一種類であるアルブミンが低下することにより、浸透圧の影響で腹水貯留する。
② 腫瘍による圧迫や、心臓起因性に静脈のうっ血が発生して腹水貯留する。
③ 重度の炎症が発生し、血管透過性の亢進により腹水貯留する。
これらを判断するには、全身精査及び、腹水検査で腹水の性状の確認を行う必要があります。
■ 検査を総合的に判断すると、このワンちゃんの場合、心臓起因性の腹水貯留と考えられました。
◆ なぜ心臓が悪くなるとお水が溜まってしまうのか・・・
それは、本来心臓は
大静脈( 酸素の少なくなった全身の血液を心臓へ送る )→右心房→右心室→肺(酸素を含む血液にする)→左心房→左心室→大動脈( 酸素をたくさん含む血液を全身へ送る )
・・・といった、全身に血液を送るポンプのような働きをしています。
◆ よって心機能低下が発生すると、しっかりとしたポンプとしての機能が果たせず、全身に送るべき血液を送れず、心臓にどんどん負荷がかかってきてしまいます。
◆ その結果、心臓内の血液は逃げ場がなくなり、血液の逆流がどんどんひどくなります。
【 左側の心臓が悪い → 肺水腫 】、【 右側の心臓が悪い → 胸水、腹水貯留 】の発生となります。
■ このワンちゃんの場合、左右共に心雑音があり、特に右側の心臓の部屋での逆流が強くあった為、腹水がたまってしまったのです。
また、心臓に負荷がかかった結果、低酸素状態になり、通常と比べ疲れやすくなり、食欲不振、元気が無い、という状況になったと考えられました。
■ そのため、心臓薬および、利尿剤の投薬をしていただくことになりました。
投薬と並行して、数日にわたって溜まっていた腹水抜去を行いました。
■ 今では飼主様が頑張って投薬をして下さり、動物さんが頑張ってお薬を飲んでくれたおかげで、少しずつ食欲が戻り、鳴くようにもなり、歩けるようになりました。
■ 動物さんは本能的に体調の変化を隠す傾向があり、体調の悪さが見て分かるようになった時には重症になっていることもあります。
■ 動物さんの体調に関してご不安があればお気軽にご相談ください(^^)/
獣医師 新美綾乃